モンスターと遊びながら、母音の感覚を育てる 〜 なんとなくわかる教育研究所 〜
「おおかみ」?「おうかみ」? 「おねえさん」?「おねいさん」?
大人でも迷います。高学年になっても、迷っている子がいます。カタカナには「ー」というのばし棒があるのに、ひらがなでは使えない。だから、のばす音(長音)の書き方は、本当にむずかしいのです。
「1年生には難しすぎるから、だいたい教えたことにしておけばいい」という声を聞くことがあります。でも、それはもったいない。のばす音の学習は、母音の感覚を育てるのにぴったりだからです。
100点がとれるようになる必要はありません。「音がのびている」と感じられること、それを声と動きで表せること。その力が育つことが大切です。だから、モンスターと戦いながら、楽しく。
教科書では「のばす音」として、あいうえおの長音をまとめて1時間で教えようとします。でも、あれはむずかしすぎます。「あ・い・う」と「え」と「お」は、まったく別ものです。先生が3つに分けて、1つずつ教えてあげてください。
悪の組織からやってきた、弱い敵。合言葉は「イーッ!」(仮面ライダーのポーズで)。みんなで力を合わせて倒します。
ルール のばしているところの口が〈あ・い・う〉のときは、そのまま。「あー」は〈あ〉、「いー」は〈い〉、「うー」は〈う〉。
例:「おにいさん」→ のばしているのは「に」のところ。「おにーーーさん。何の口になった?」→〈い〉の口。だから〈い〉と書く。
「おばあさん」→「ばー」→〈あ〉の口。「しいたけ」→「しー」→〈い〉の口。
ここだけで1週間くらい、たっぷり遊びます。この期間がとても大事。
「えいか、いか。えいえい」と言ってくる、強い敵。
ルール 口が〈え〉になるときは、〈え〉か〈い〉。「ねえ・ええ・おねえさん」の3つだけ〈え〉。ほかはぜんぶ〈い〉。
例:「けいさん」→「けー」→〈え〉の口 → 3つの中にないから〈い〉。
「せんせい」も同じ。「せー」→〈え〉の口 → 3つにないから〈い〉。
「せんせい」を、のばさずに言う子もいます。無理にのばさせなくて大丈夫。「のばしても言えるよね。今日はのばして言うよ」と教えてあげてください。
いよいよラスボス。「がっはっは~!」と悪そうに笑います。いちばんむずかしいレベルです。
ルール 口が〈お〉になるときは、〈お〉か〈う〉。下の呪文に出てくる言葉だけ〈お〉。ほかはぜんぶ〈う〉。
呪文にない言葉も出てきます。「おおきい」は呪文の「おおきな」と同じ意味だから〈お〉。「おおだいこ」も「大きな太鼓」だから〈お〉。意味からたどって見つける練習をしてあげてください。
「とお(10)」「とおる」「おおい」は、言葉のイメージがむずかしい子もいます。一つずつ、ていねいに。
印刷してラミネートし、切り取って、うらに磁石をはります。百円ショップのB4ホワイトボード(200円)にはって、いつも教室に飾っておくのがおすすめです。
ルールを教えたら、そのルールだけでしっかり遊びます。おすすめは「神経スイスイ」。
ボードを見ればできるけれど、ヒントがなくなるとできなくなる子は必ずいます。手元用のヒントカードをたくさん印刷しておいて、そういう子にそっと渡してあげてください。
「とけい」は「とけえ」とのばして読むのか、「とけい」とのばさずに読むのか。じつは、日本の言語学者の間でも意見が分かれています。だから、のばさずに言う子に「のばしなさい」と言う必要はありません。伝えたいのは「のばしても言えるよね」ということ。そして「迷ったら、のばして考える」という方法です。のばしたら見つかる、という経験をさせてあげてください。
音は目に見えません。子どもがどうつかんでいるかを見るために、音記号(●や棒)で表したり、動作化したりします。のばすところは、手を合わせたまま下へ。「せーの、すーじ!」と、のびているところを体で表します。
感覚を育てるには時間がかかります。1時間で全部わからせようとしないでください。モンスターを教室に飾っておいて、「わからなかったら、いつもそこを見ればいい」「毎回、同じやり方で考えられる」を続けることが大切です。
のばす音でつまずいたままだと、そのあとの学習がずっと苦しくなります。そして、この学習は口の形や母音を感じる、楽しい活動です。1年生のうちに、遊びとしてたっぷり取り組んでほしいと思っています。
なんとなくわかる教育研究所では、ひらがなの特殊音節(のばす音・つまる音・ねじれる音)の指導をはじめ、ゆっくり学ぶ子どもたちが「ことば」や「数」となかよくなれる教材と授業を、先生方といっしょに研究しています。
Zoomでの学習会・講座を毎月開いています。講座のアーカイブ動画は、プレミアム会員の方がいつでも見られます。
🔺 小さい「や・ゆ・よ」の教え方は → ねじれる音(拗音)の指導
🎮 ひらがなの読みを、ゲームで練習できるデジタル教材もあります → たおせ!ひらがなモンスター